2011-02-09

コープソリューション掲載記事2 コープさっぽろ「あかびら店」

小商圏における地域共存の店舗づくり
  ―コープさっぽろ「あかびら店」ー            2010年5月20日
                            生協研究家 西村 一郎 
赤平市は
 北海道の中央に位置する赤平市は、石炭で栄えた最盛期の1960 年には59,430 人の人口を擁したが、2008年になると人口は13,669 人で7,120 世帯までに激減している。
 その中心市街地にある赤平駅から500mの地には、赤平中央中学校や市立赤平総合病院があり、その横に2009年2月開店のコープさっぽろ「あかびら店」があった。この敷地は、2007年3月末をもって廃校となった赤平小学校のあった場所であり、卒業生のみならず市民にとっても想い出が多い。

「あかびら店」に入ると
売り場面積630坪の店に入る。高齢者が利用しやすいよう棚に並んだ商品は、小分けやバラや半調理品の商品が目立つ。水産品でオープン当初は干物中心であったが、少しずつ鮮魚や「魚屋さんのお寿司」が人気を呼ぶようになった。また試食も積極的に展開して、それぞれの商品の美味しさを訴えている。澤崎裕店長の説明である。
「「あかびら店」における「おいしいお店」の良さを、地域の方に少しでも早くわかってもらうために、毎日16品を目標にして試食を提供し、新しいたべかたの提案と商品のアピールをしています」
新しい商品を訴えるには、何よりも試食でまず口に入れてもらうことが効果的のようだ。
 さらに店長の話は続く。
 「赤平における利便性や価格対抗に加え、SM店として品ぞろえの豊富さや鮮度の良さもあれば、商品を切らさないことや料理の提案など、販売の基本を突き詰めていくことで、地域から信頼される店づくりをよりすすめたいものですね」
 結局は、その地域の条件に応じた商品とサービスの提供によって、利用する一人ひとりから信頼されることにいきつくようだ。
 同席した旭川地区本部の横澤秀明本部長からもコメントをもらった。
 「2002年には赤平にあった店を残念ながら閉めましたが、当時からの3500名ほどの組合員が残ってくれたし、新店のオープンからすぐに1200名も新たな組合員を増やし、滑り出しとしては悪くありません」
 新しい組合員を含めて、地域住民から「あかびら店」への期待の高いことがよくわかる。

無料の買い物バス「トドックあかびら号
 「あかびら店」内の片隅には、コープさっぽろとして初めて展開した無料の買い物バス「トドックあかびら号」のゆったりした待合所がある。マイカーを持たず買い物に出かけることが不便な高齢者などに利用してもらうため、34人乗りの中型車両を貸し切りバスの形で早朝から夕方まで走らせている。コープさっぽろがバス会社に委託して運行し、東のコース4往復と西のコース3往復で、赤平市内の住宅地をほぼ網羅している。一般の路線バスはあるが、日中でも1時間に1本ほどしか運行してなく、以前から改善を求める声はあがっていたが、採算が問題で増便はされていない。
 こうした中でコープさっぽろでは、高齢者の市民病院の利用を最優先し、最初の到着時間を開店時間の9時でなく、病院の受付けに合わせてあえて8時27分にしている。「あかびら店」の経営よりも地域住民のニーズを優先した結果で、まさに生協らしい配慮といえる。
 *写真 ―無料の買い物バス「トドックあかびら号」―

地元や市行政からの期待
赤平商工会議所を訪ね、笑顔で迎えてくれた多田豊専務理事から話を聞いた。
「既存の地元商店への影響を心配する人もいましたが、市街地に核となる大きな店ができたことでにぎわいが出てきたことにより、まわりの店にもお客が入るなどの波及効果が出ていますよ」
赤平商工会議所の「あかびら店」を歓迎する考えは、見せてもらった平成21年度の次の事業計画にも表現されている。
「第一は商業振興についてでありますが、(略)コープさっぽろの中心市街地への進出と既存大型店のリニューアルなど商戦が激化することで、従来の赤平の様相とは異なる新しい局面を迎えたといっても過言ではありません。しかしながら、いかに情勢が変わろうとも地域経済の基本は変わりません。(略)この度の状況を相乗効果の好機と捉え、商業振興の対極的な見地に立ちつつ、繁栄の道筋を歩むべきものと考えます」
地元の商工会議所が、過疎化を止めるためにもコープさっぽろ「あかびら店」を歓迎している様子がよくわかる。
歓迎しているのは市役所もまったく同じで、高尾弘明赤平市長に会って話を聞かせてもらった。
「「あかびら店」の場所は市が持っていた小学校の跡地で、活用できずに困っていたところを買い上げてもらい、市の財政としても大いに助かりました。それに生協さんの無料バスのおかげで、側にある市立病院の利用者も増えて、高齢者の方たちにも大変喜んでもらっています」
こうして「あかびら店」の開店で、地域の活性化が具体的に進みつつある。

コープさっぽろの願い
コープさっぽろの組合員は全道ですでに130万人をこえ、道内の世帯組織率は約50%にもなり、道内ではローカルチェーンのアークスと各地で小売業の一番店争いを熾烈に展開している。その中で活躍している山口敏文専務からの説明である。
「人口が1万人前後の小商圏でも、一番店になることができればSM店の展開を成功させることができるのですよ。人口が約1万人の小さな町が道内には24ヵ所あり、こうした小商圏におけるSMの店舗展開を成功させることによって、さらなる経営規模の拡大につなげて、コープさっぽろにおけるマスメリットをよりいっそう実現させていくことができます。
小商圏では人口が少なくて経営が難しいと予想されますが、地域の一番店となって利用結集を強めることができれば、土地代などの投資コストも都会に比べて格段に安くて、必要な損益を確保することは充分に可能です」
 小さな都市では冷え込む経済の影響も著しく、SMの店舗展開は困難ではないかと普通は考えてしまうが、そうではないと山口専務は明言し、さらに説明は続く。
「どこの過疎地でも高齢化がすすみ、医・職・住が分断されて社会問題が広がって北海道でも同じです。特に病院と商業施設は、生活する住民になくてはならない存在ですが、スーパーが1店もない町もあって、その不便さがさらに過疎化を進めています。そこで過疎地における町づくりにも生協の店舗で貢献することが大切で、赤平市の行政や商店街と相談して町の中心地に出店しました」
車社会を前提として広い駐車場のある郊外タイプのSM店が生協でも一般的だが、そうではなく地域の条件によっては中心市街地に出店することも大切であるとの考えで、これもまた私にとっては驚きであった。
 
さらなる広がりが
コープさっぽろの取り組みは、住民の暮らしを支える商品の提供だけでない。たとえばこの1月30日に実施した赤平除雪応援隊には、札幌から約40名が参加して、赤平市の高齢者宅の除雪をし、地元町内会の方たちとの交流もしている。人と人の協同の輪を大切する生協ならではの企画である。3年度目に入った「あかびら店」は、引き続き冷え込む地域経済の中で収益性の確保など課題はあるが、供給高は前年比で10%近く伸ばし、着実に地域へ根ざしつつある。
1万人ほどの小商圏における市街地へのSM店展開は、この赤平に続いて2号店が2009年12月に道東で別海店をオープンさせた。さらに2010年になってからは、登別、白老、福島、木古内の小さな町において出店している。
過疎地に生協の灯火を赤々と掲げるコープさっぽろの果敢な挑戦が、着々と進みつつある。SM店は中・大都市の郊外において展開するだけでなく、地域の条件に応じて「あかびら店」のように小都市の市街地に出店することは、他の生協においても一つのヒントになることだろう。

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