2011-02-09

コープソリューション掲載記事8 地域へ拡がるさいたまコープの社会貢献

コープソリューション原稿8
地域へ拡がるさいたまコープの社会貢献    2010年11月20日 生協研究家 西村一郎                     

地域貢献の理念
 コープネットの一員であるさいたまコープは、以下の理念をネットグループで共有し、地域への社会貢献をすすめている。
 「CO・OP ともに はぐくむ くらしと未来
   私たちは、一人ひとりが手をとりあって、一つひとつのくらしの願いを実現します。私たちは、ものと心の豊かさが調和し、安心してくらせるまちづくりに貢献します。
   私たちは、人と自然が共生する社会と平和な未来を追求します」
 人口712万人で291世帯を有する埼玉県において、さいたまコープの組合員は82万人になっている。世帯加入率は平均で28.5%となり、中には50%をこえている地域もいくつかある。ここまで地域社会との関わりができてくると、宅配や店舗における商品の供給だけでなく、子育てや教育や環境保全などにおいて、地域社会から生協に求められる課題がいくつも出てくる。それらにチャレンジしているさいたまコープの取り組みは、他の地域生協においても参考になることが少なくないだろう。

地域ステーション
 ステーションとは、コープ商品は利用したいが条件が合わない人に、近くの商店などで生協の商品を受け取ることのできる仕組みである。地元の酒屋やクリーニング店などに、カタログ購入の取次ぎを委託してメイトになってもらい、希望する組合員にステーション購入してもらう。週に少なくとも1回は商品を預かってもらい、生協から届けた商品の受け取り・保管・渡しや注文書を預かってもらう。手数料は扱う商品代金の2%で、利用する組合員の募集は生協で行う。利用の受け入れ人数はメイトの都合にあわせ、またチラシを地域に配布するので店の宣伝にもなる。
 こうして地域の様々な店の協力によってステーションは、県内で1100ヵ所となっていて、県内コンビニ店の半分の規模になっている。
 さらに、公団住宅にかつてあった商店の跡地をステーションにして、商品の受け渡しだけでなく、組合員を含めた地域住民の集う場にする計画を具体化しつつある。小さな食品スーパーが撤退した公団住宅では、高齢化した住民はバスやタクシーを使って遠方まで買い物に出かけ、いわゆる買い物難民になっていることが多い。
 そこで団地内で必要な日用品を受け取り、あわせてお茶飲みもできて交流のできる場をイメージし、公団住宅の管理組織および団地自治会との協議をすすめている。こうした団地内のステーション・ふれあい「ひろば」(仮称)は、2010年12月に具体化を予定し、地域の組合員の協力も得て、食事会やふれあい喫茶を準備している。

地域への特別の配達
 重くて種類の多い商品の配達を特別に希望するケースが地域にはあり、それらにも応えている。
1つ目は、店から配達するあったまる便」である。10時から午後4時まで受け付け、店舗で購入した商品を1回100円で運ぶ。なお配達時間は、正午から午後5時の間を予定している。なおこの方式は、まえもって組合員と電話する時間の約束をしておき、電話を使った御用聞きへと切り替え中である。 
 2つ目は、学童保育の施設や保育園などへ、食材や菓子類の配達である。以前は学童保育のスタッフが、菓子などを選定して買出しをおこなっていた。その煩雑な作業を、生協法の改定によって生協で行うことが可能となり、現在は880ヵ所に配達し1施設あたり14000円の利用となっている。

市民団体の支援                                 
NPO法人や各種ボランティア団体や市民団体などを応援するため、2006年度に市民活動助成金制度をスタートさせた。「食・消費者の権利」「福祉、健康、子ども・子育て」「教育、文化、スポーツ」「環境保全」「人権、平和、国際協力・交流」「災害支援」の各分野の事業別に、これまで延べ181団体に約2,800万円を助成してきた。県内全域を対象の団体は50万円を上限とし、一地域での事業は10万円を上限にしている。
  
子育て支援
常設の親子ひろばであるCoccoルームは10会場で、地域子育て支援拠点は3市4ヵ所で受託し、事業所内託児所は4ヵ所で32名が登録している。また保育園、幼稚園、小学校、フェスタなどで、生協の共同購入に使用しているトラックを持ち込んで、子ども交通安全教室を開催し、子どもの交通事故防止に協力している。交通ルールだけでなく、子どもたちにトラックの運転台に座ってもらい、そこから見ることのできない死角のあることを体験してもらい、車に注意することを学んでもらっている。
また職員と組合員で編成する環境学習応援隊で、小・中学校への出前講座もおこなっている。

エコ循環米
店舗から出る食品残さを、県内にある「彩の国資源循環工場」で堆肥化し、米作りの肥料と再利用して、2009年度は埼玉県産米「彩のかがやきエコ循環米」の年間販売(約18,000袋)に取り組んだ。   (図)

二酸化炭素削減
家庭や店舗総菜部の使用済みてんぷら油を回収し、バイオディーゼル燃料(BDF)の生産を専門会社に委託している。精製・加工処理し、寒冷地対策も施した高品質のバイオディーゼル燃料100%を安定的に調達することができ、BDF車両82台を導入した。また、BDF車両の円滑な運行と導入拡大に向け、専用の給油スタンドも導入している。

地域の障がい者を雇用
障がい者の働く場の拡大をめざして、地域の社会福祉法人との業務提携を1985年開始し、物流部門で複数の障がい者が働くようになった。その後も交流を強め、1995年には埼玉県共同作業所連絡会とも協定を結び、障がい者雇用を積極的に進め、2006年度は5つの養護学校から12名の研修生を迎え、卒業後の2007年に2名が就職した。2009年度は10の特別支援校(旧養護学校)から、20名の研修生を受け入れている。2009年の障がい者雇用率は年平均3.04%となり、法的雇用率1.8%を大きく上回って推移している。
 なお2009年度末(10年3月10日)の障がい者就労者は51名で、正規4名とパート・アルバイト47名になり、健常者と同様の給与体系で働いている。
  
たすけあいの活動
組合員が中心となって生協の施設などを活用し、地域における人と人の交流を応援している。1つが誰でも参加できる「ふれあい喫茶」で、17ヵ所において月に1回開催し、コーヒーや紅茶や手作りのケーキなどを出して、楽しい団欒の場を設けている。他には高齢者向けの「ふれあい食事会」があり、9ヵ所において月に1回開いている。季節に合わせた献立の工夫だけでなく、参加者がゆったりとおしゃべりする時間や、歌ったり時には健康チェックをするなどの工夫もしている。
(写真)

地域社会の一員としての責任発揮
 こうして地域社会に生協として関わることの目的や意味について、さいたまコープ佐藤利昭理事長にたずねた。
 「私たちのありたい姿は、大多数の県民が生協の何らかの事業や活動に参加していることで、誰もが安心して暮らすことのできる地域づくりの担い手になることです。そこで社会の一員としての生協の責任と役割をより発揮するため、社会貢献活動推進委員会で議論を深めてきました。その結果、食と商品、子ども・子育て応援、環境、くらしの4分野での課題を明らかにし、事業と運動の両面で関わりを強めつつあります」
 誰もが暮らしやすい地域づくりに向けて、さいたまコープの挑戦が確実に拡がっている。

0 件のコメント:

コメントを投稿