2013-04-15

映画「先祖になる」

 都内のポレポレ東中野において、「先祖になる」を観た。岩手県陸前高田市で被災した77歳の佐藤直志さんの生き様を、寄り添って丁寧に描いたドキュメント映画である。消防団だった一人息子を津波で流された佐藤さんは、被災して壊すことになった実家の跡に、津波で立ち枯れする近くの気仙杉を使って家を新築した。半分農家で、後の半分は木こりとして働いていた佐藤さんは、仲間の協力も得て、自分で大きな杉を何本も切って準備する。津波が来た場所に建物はダメという行政や、再び同じ高さの津波が来ればと心配する奥さんもいれば、自らの病のことなど、悩み事はいくつもある。それでも生きている間は、自らの力で前に進もうとする佐藤さんの情熱が良く伝わってくる。頑固な姿と同時に、神社に奉納してある背丈よりも高い自作の男根を紹介するなど、ユニークに生きるたくましさも紹介していた。
 「人間は働かないとダメになる」
 ガレキの残る畑には、蕎麦の種をまいて育てて収穫する佐藤さんの言葉は重い。
 私が3年前に建てた小さな平屋には、全て国産の木材にこだわり、柱や床や梁は近くの栃木産を使い、全ての腰板には気仙杉をはった。もしかすると佐藤さんが切り出した気仙杉かも知れず、映画を観つつかってに想像を膨らませていた。震災だけでなく、どう人間は生きていくかを考える上でも参考になるいい映画である。

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