2015-07-10

会津地方を訪ねて

 7月6日から8日まで会津を訪ね、天気が良かったので、スケッチブックを持って喜多方の蔵めぐりもした。大和川酒造などの酒蔵がいくつかあり、それぞれが無料で見学させてくれ、自慢のお酒の試飲もできるから最高である。
 会津坂下にある8.5mもの立木千手観音は、その名の通り根のある大木を彫った仏像で、日本一の立像観音とのことで迫力があった。808年に彫刻したそうだから、実に1200年以上もたっていることになる。それぞれの樹木にも命が宿るという日本古来の自然観に、仏教の教えを重ねて彫ったものだろう。奈良や京都とは異なった自由な会津仏教の1つであり、おもしろい流れである。
 いろいろな方にも会ってきた。スクールソーシャルワーカーをしている女性の話では、東日本大震災で震災して会津地方に避難している家族で、補償金を使いはたし、子どもの食費にも事欠くケースがあるとのこと。特に長い休みの後は、痩せた状態で登校する子がいたりして、格差社会がより深刻になっているとも話していた。
 この6月に出版させてもらった『協同の力でいのち輝け』の取材でお世話になった、会津美里の農民詩人前田新(あらた)さんも訪ね、今回は書斎なども見させてもらいながら話を聞かせてもらった。本を贈るとすぐに、「冥土への最高の土産ができました」とのていねいな礼状が届き恐縮した。
 脳梗塞をおこして町会議員を降りてから前田さんは、1年に1冊は出版すると決意し、農作業をしつつこれまでに詩集や小説や評論集など15冊を出しているから凄い。80歳になる今も、会津の近代史における農民の動きなどを研究し、いずれ本にする準備をしている。
 蔵を改造して造った書斎は、壁面に本が整然と並び、さらには気分転換に描いている絵もいくつかあった。広い窓から見える磐梯山の雄大な姿も、100号ほどののびやかな絵になっていた。訪ねた日は朝5時から奥さんや娘さんと農作業でキューリもぎなどをされ、疲れた体であっただろうが笑顔で10時から3時前まで楽しく懇談させてもらった。
 後遺症で片腕しか自由に動かすことのできない体で、トラクターを運転し、パソコンや絵筆も動かしている。農民詩人というより、宮沢賢治が強調した農民芸術家そのものである。

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