2016-03-21

「文章は人格なり、己を欺くなかれ」 高知県立文学館を訪ねて

 3月13日から17日まで、墓参りを兼ねて久しぶりに高知の実家へ1人で帰った。咲いている桜もあれば、ウグイスの鳴き声が裏山に流れ、南国土佐はすっかり春であった。満開の菜の花に顔を近づけると、鼻を突く強い香りに子どもの頃の事を想いだす。都会と異なるゆったりした時間が流れ、心身ともにリラックスすることができた。
 高知高専の親友に「ひろめ市場」で会って昼飯を食べつつ懇談し、その後近くでお城の下にある高知県立文学館を訪ねた。「宮沢賢治 ことばの宇宙展」を開催中で、いくつかの作品に写真を添えて賢治のファンタジーな世界を楽しむことができた。常設館には土佐の作家たちが並び、「わが日本 古より今日に至るまで哲学なし」と断じた中江兆民、大逆事件で殺された幸徳秋水、「文章は人格なり、己を欺くなかれ」と書いた大町桂月などが並んでいた。
 中でも物理学者の寺田虎彦は、スペースも多く見応えがあった。専門の科学だけでなく、随筆も優れているし、他にも絵やヴァイオリンやチェロまで親しんでいる。多面的な人間であり、ぜひ少しでも見習いたいものだ。
 ひとつ残念だったのは、「やなせたかし」さんがあまりここでは評価されていなく、作品はほとんどなかった。漫画家としてだけでなく、詩やエッセイなどでもすぐれた作品はいくついもあり、高知県出身の文学者として正当に評価すべきと私は思う。

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