2017-02-07

1月の被災地訪問4

 31日の朝に一ノ関駅で待ち時間があり、ふらりと駅前へ出てみた。街中の掲示板があり、「世嬉(せき)の一」の酒蔵跡に造った民俗文化博物館酒蔵があり、その日本一小さな文学館にゆかりの作家の資料を展示しているとあった。ただし、火曜日が休館日とのことで、運悪く今日は火曜日である。それでも他に面白そうな場所もなし、外形だけも見ておこうと雪道を歩いていった。10分ほどで着いて施設の案内を見ていると、中年の女性がやってきて「こんにちは!」と笑顔で会釈して建物を開けて入っていった。もしやと思ってその後から入り、「見学はできますか」と尋ねると「どうぞご覧ください」とのこと。それも文学館は無料とのことで、喜んで入らせてもらった。 

 10畳ほどの狭い部屋に、12人の作家の作品や写真などを飾ってあった。その1人が大好きな井上ひさしさんで、代表作「吉里吉里人」が一ノ関をモデルにしていると大きな手製の地図もあった。中学生の頃にここで一家が住んでいたとのことで、当時の壁が崩れた蔵の写真もあった。同じ敷地に映画館があり、そこにも井上少年は頻繁に出かけて、切符ちぎりなどもしつつ映画を楽しんでいた。一家の暮らしがどうしようもなくなり、やがて泣きながら井上さんは、ここから仙台のキリスト教の施設へと車で運ばれていくことは、何かの作品で読んだ記憶がある。貧困と映画の華やかな世界。多彩な井上さんの原点に触れたような気がした。

 同じ部屋には、沢内村を舞台にした及川和男さんの
名著「村長ありき」の生原稿の束が積んであった。故深沢村長をモデルにした感動の作品で、映画にもなった。
 敷地内には島崎藤村の文学碑が建ち、藤村の失恋を癒やした地にちなんだとして初恋神社まである。67歳にもなって今さら初恋もないだろうが、誰も見ていなかったのでこっそり両手を合わせてきた。さてどんなご利益があるのやら。
 ともあれ歩いていると、どこかで思わぬ場面に出くわすもので楽しい。
 

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