2017-06-30

遠野のガラス絵館を訪問

 陸前高田で取材中に、友人から遠野で暮らすガラス絵作家の児玉房子さんの死去の知らせを受けて驚いた。現代ルポルタージュ研究会に何回か参加してもらい、ガラス絵の勉強で世界の各地をまわっていることや、軍隊をなくしたコスタリカのことなども聞かせてもらった。またルポ研の発行する冊子の表紙にもガラス絵を使わしてもらったし、ヨーロッパの農婦たちを描いた小さな作品を1点購入させてもらい書斎に私は飾ってある。
 25日の夜に仙台へ入らなくてはならず、陸前高田から花巻に出て宮沢賢治記念館を訪ねる予定だったが、急きょ遠野へ行くことにした。
 遠野の駅前にある観光案内センターで天ケ森ガラス絵館のチラシをもらい、掲載している地図をたよりに持参した折り畳み自転車を組み立てて向かった。
 到着まで約1時間ほどかかった。途中から急な坂道で自転車を押して登り、木立の中に立派な木造の館があて驚いた。30坪の部屋に宮沢賢治やコスタリカなど150点ほど展示してあり、他に観客もいなくてゆっくり鑑賞することができた。児玉さんらしい鮮やかな色使いで、どれも心が和む。入場料が無料で、なおかつ親切な係りの年配の女性が香りの高いコーヒーを入れてくれた。
 児玉さんのお兄さんも館にいたので、房子さんとの関係を話してお願いし、館の裏にある母屋の仏壇でお線香をあげ読経をさせてもらった。大きな杉の木に両手を回し、笑っている房子さんの写真が飾ってあった。
 何回も入退院を繰り返し、今回も房子さんは退院して戻ってくるつもりでいたようだが、急変してそれがかなわぬこととなった。享年77歳で、102歳の母親を残してのことである。さぞかし心残りであっただろう。房子さんの人間や平和にこめた温かい願いが、ほのぼのと伝わってくる素敵なガラス絵館である。訪問するのに少し疲れはするが、ぜひ一人でも多くの方に訪ねてもらい児玉房子さんの心に触れてほしい。

2017-06-29

被災地で野の花を活ける

 24日の夕方から、あすなろホームの前の理事長である高井文子さん宅を訪ねた。高齢で病気にもなり理事長は交替されたが、理事として今もあすなろホームやグループホームSUNを応援している。
 その1つが、SUNの利用者さんたちに教えている活け花で、その方法がユニークである。利用者の7人と一緒に近くを散歩し、途中の道端でそれぞれが気に入った野草の花や小枝などをつんで持ち帰る。それを使って活けるのだが、花器も市販の花瓶でなく、日常に使用するどんぶりなどの食器やペットボトルなどを切って加工した器で、中に剣山を置いて花や枝を立てる。それも活け花の流派が大切にしている形でなく、この花が人間であればどのように飾ると一番嫌味もなく美しく見てもらえるかと考えながらしている。花と葉や小枝の関連を人間のコミュニケーションに置き換え、利用者さんの一人ひとりの判断を重要視しているからおもしろい。
 利用者さんにしてみれば、高井さんから言われたとおりに花を活けるのでなく、自らの友人関係に引き付けて自由に考えて草花をセットできるので、きっと楽しいことだろう。それぞれが活けた花は、各自の部屋に持って帰って飾っているし、ときには地域の方たちをSUNに招き、みんなで活けた野の花を楽しんでもらう場も作っている。そうした場で地域の方たちが喜んでくれれば、障がいをもった利用者さんには自信につながり、より情熱を持って活け花を暮らしの中に取り込んでいくことだろう。
 福祉文化という言葉があり、専門の本や学会もできている。高井さんが進めているように障がい者の方の自由な発想で花を活け、それを日々の暮らしの中で愛でて人生を楽しむことが、福祉文化にもきっとつながっていくことだろう。ところで福祉は障がい者や高齢者だけを対象にしてなく、元々は幸せを意味するので、私も含め全ての人にとって大切なことである。野の草花を私ももっと愛でてみたい。
 写真は野の草花が生い茂る陸前高田の広い被災地。

2017-06-28

陸前高田 作業所あすなろホーム祭り

 6月24日にあすなろホーム祭りがあり、前日の朝6時に取手を出てJRを使って陸前高田市へと、また折り畳み自転車を持って入った。梅雨の時期で天候を心配していたが、23,24と晴天で腕などは赤く日焼けしたほどである。
 23日の昼にあすなろホームへ着くと、会場となる駐車場ではテント張りなどの準備をしていたので手伝った。利用者さんや職員たちは、ダンスや演奏など最後の仕上げを繰り返していた。
 24日は8時前に民宿からホームへ行き、10時の祭り開始までの準備を手伝った。6張りのテントを立ち上げ、各足に重い砂袋を括り付けたりなどした。会場の周囲には、本や衣料などのバザー、ドーナツやケーキなどあすなろの商品、かき氷、冷たいドリンク、焼きそばなどのコーナーが並んでいた。
 10時には150人ほどが集まり、2人の利用者さんの司会で開会の言葉があり、理事長や利用者の自治組織青空会会長からのあいさつもあった。陸前高田のマスコットである「ゆめちゃん」も来場し、可愛い高田保育園の園児15人と踊りを披露してくれた。地域と作業所がよく連携していることがわかった。
 次から利用者さんたちの発表である。15人ほどのダンスグループ「カラフルポンチ」は、下の写真のように両手に黄色のぼんぼんを付けて軽やかに踊った。10人ほどのパフォーマンスグループ「みんなが英雄」も元気に体を動かしていた。10人ほどの手話グループはまなすによる「花は咲く」や「サザエさん」があり、正面に座っていた私は手話もまねながら一緒に歌った。
 15人ほどのバンドグループ「けせんオールスターズ」は、エレキや金管などを使い、懐かしい「夢の中へ」などを演じ歌ってくれた。
 途中でボランティア10人の紹介があり、私も簡単に自己紹介させてもらった。
 餅まきでは、紅白のたくさんのお餅が青空に高く舞った。写真をずっと撮っていた私は、1個も手にすることができず。20人ほどが輪になったドラムサークルでは1員に加えてもらい、利用者さんたちと音をしばし楽しんだ。
 最後の出し物は、チャオチャオ陸前高田と高田音頭で、車椅子の利用者さんも楽しく両手を上げていた。
 心配した熱中症でダウンする人もなく、2時には予定したプログラムを全て終えた。
 障がいをもった利用者さん、職員、保護者、地域の方たちが協力し、楽しいお祭りであった。

2017-06-22

子ども被災者支援法制定から5年

20日の午後に、参議院会館講堂において、2012年にできたこの議員立法の法律の今を問う国際環境NGO「FoE Japan」の主催集会があり参加した。被災した子どもに寄り添って検査や保養などをうたっている画期的な内容だが、避難者からは「塩漬け、棚ざらし、骨抜きの5年間」との指摘もあるほど期待した効果が出ていない。

 なぜ骨抜きになったのか話題になり、川田龍平議員から①議員立法であり、政府が提案した法律でないため責任をもって政府は取り組んでいない、②政権交代の2点との説明があった。おかしな話である。できた経過は別にして、施行した法律に沿った実施が政府に求められているのに、それをサボタージュしている。
 避難者の現状について、「避難の協同センター事務局長」のパルコープ連合会の瀬戸さんから絶壁に追い詰められている事例報告があった。特に経済的にもきつい母子家庭は深刻で、手持ちが3万円しかなく、住宅保障もなくなって路頭に迷っている深刻な話などもあった。被災者支援が貧困対策にもなっている。
 被災者に寄り添っている数少ない医師の1人である崎山さんからは、すでに191人と罹患統計より数十倍の高さで福島県民調査で甲状腺癌の子どもが発生しているのに、県民調査委員会ではまだ「放射線の影響とは考えにくい」としていると強く批判していた。
 残念ながらこれが現状である。それでも諦めずにできるところから被災者のプラスになるようにしていきたい。まだ0.15μSv/hもある取手市で暮らす私の可愛い4人の孫のためにも。
 

2017-06-08

映画「スノーデン」を観て

 凄い映画であると同時に、私を含めて世界中のメールや携帯電話を盗聴する仕組みができている事実に底知れない恐ろしさや怒りを感じた。
 オリヴァー・ストーン監督が、アメリカ政府による国際的な個人情報監視の事実を暴いた「スノーデン事件」に迫るドキュメント風映画である。CIAおよびNSA(アメリカ国家安全保障局)職員だった愛国青年のエドワード・スノーデンが、恋人との幸せな人生を捨ててまで、2013年6月にアメリカ政府がひそかに作り上げた国際的な監視プログラムの存在を内部告発する前後の9年をていねいに描いている。
 1つの場面に日本が登場する。スノーデンはNSA在職中の2009年に在日米軍の横田基地で勤務し、日本の通信網を支配し、送電網やダム、交通機関などインフラ施設をコントロールする「スリーパー・プログラム」を仕掛けていたと告白する。日本列島の南から順に街全体の灯が消えて真っ暗になり、「日本が同盟国でなくなる日が来たら、"消灯"」というスノーデンのセリフがあった。原発もけっして例外ではないだろう。
 来日時のインタビューで監督は日本を「同盟国でなく人質を取られた国」と話している。 
 映画のラストでロシアに亡命したスノーデンが、ネット中継で公の場に姿を現す。国際的な盗聴という違法行為を平然とアメリカは行い、しかもそれに世界的に有名なIT企業が協力している現実にスノーデンは義憤を感じたと述べた。
 恐ろしい映画だが今の社会の現実を理解するためには、ぜひ観るべき映画だろう。 
 ちなみにスノーデンが、6月2日付けの東京新聞において、「共謀罪 監視が日常に」と警鐘し、NSAで使っていた大規模監視システムは、すでに日本へ2013年に供与した文書を公開している。もちろん安倍政権は認めてないが、私はスノーデンを信じる。
 
 

2017-06-07

パワーシフトのすすめ

 6月3日に埼玉で、地球規模での環境問題に取り組む国際環境NGO であるFoE Japanが主催し、シンポジウム「電力自由化から1年~動き出す地域・市民・ビジネス」があり参加した。電力小売全面自由化から1年たつが、自然エネルギーの供給をめざす電力会社への切り替えはまだこれからで、持続可能なエネルギー社会に向け、電力(パワー)のあり方を変えていくパワーシフト・キャンペーンを進めている。太陽・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能な自然エネルギーは、化石燃料や原子力などに依存するエネルギーと異なり環境への負荷が大きく低減する。
このため電力自由化やエネルギーをめぐる最新情報を共有し、パワーシフトに取り組む以下の3団体からの報告を受けた。
    自由の森学園:学園の理念に沿って再生可能エネルギーを重視する電力会社を選択
    こだいらソーラー:出資型の市民共同発電所、東京で第一号
    ラッシュジャパン:倫理観をビジネスの原動力に
なおFoE Japan は、世界74ヵ国に200万人のサポーターを有するFriends of the Earth International のメンバー団体として、日本で1980年から活動をしている。
我が国の債務残高はGDP比で2016年になんと232%にもなり、経済危機が心配なイタリアやギリシャよりもはるかに高い。国策で進めた原発で世界史上最大の事故が発生したのに、政府の誰も原因究明や責任をとらずに再稼働や輸出を推進している。こうした中では協同組合の互助の精神で、自分たちにできることはたちで実践していくしかない。すでに全国では9の地域生協が電力事業をスタートさせ、他にも検討している生協がいくつもある。


私は、我が家と子どもの家を含め3カ所にソーラをすでに設置している。加入している生協が電力事業を開始すれば、すぐに切り替えたい。

2017-06-04

陸前高田の作業所を訪ねて

 5月29日早朝から折り畳み自転車を持って新幹線で北に向かい、一ノ関・気仙沼経由で6月2日まで陸前高田市へ入った。
 2か月ぶりだが市内のかさ上げ地にはショッピングセンターもでき、目まぐるしく街の様子が変化している。
 今回は作業所あすなろホームにおいて、障がいを持った利用者さんたちと一緒の作業をいくつもさせてもらい、休憩時間などに懇親して障がい者の目線で作業所の運営を理解することが主目的であった。生わかめでは、茎をとり剣山を使って細かく裂いたり、つまみになるような一定のサイズに揃えたりした。レタスなどの新鮮な野菜3種類をカットして混ぜ合わせ、市販のカット野菜としての袋詰めもある。高度な技術を要するのは、ドーナツやケーキ作りである。多様な種類があり、かつその日の室温や湿度などでも発酵時間や加熱温度などを微妙に変えなくてはならず、こちらは側に立ってながめるだけであった。
 障がいに応じて椅子での作業など、1人ひとりに対応している。また同じ人でもその日の体調は朝になってみなくては分からないこともあり、顔を見て何をしてもらうかを職員は最終判断している。
 中にはそうした作業の
できない重度の方もいるが、椅子に座って販売用のビニール袋に、マジックインキで絵や「ありがとうございます」などと描いていた。
 一般におこなわれている作業に人を合わせるのでなく、逆に人に作業を合わせているので、それは和やかな雰囲気がどこも漂っていた。
 後半の2日間はあいにくの雨となり、自転車での移動はトラックの水しぶきを受けるなど大変だったが、今回も有意義な体験をさせてもらい、また貴重な取材もできた。