2017-09-13

半年ぶりに「きらら女川」を訪ねて

 9月6日の朝のバスで陸前高田から気仙沼経由で女川に入った。途中で南三陸町を通過し、以前に何回か訪ねた志津川漁港やカキ処理場などを眺めた。津波で43人が亡くなった高さ12mの3階建て防災対策庁舎は、周りの盛り土が高くなり、瞬間的にしか見る事が出来なかった。私がカメラを向けていると、乗客の年配の男性は静かに合掌していた。
 半年ぶりの女川も、いたるところでまだ盛り土作業が続いていた。駅前にできた商業施設の一角に、障がい者も働いているレストラン「きらら女川」があり、そこで秋刀魚定食をいただいた後で、自転車を組み立てて高台にある作業所「きらら女川」へ向かった。
 作業所2階にある休憩所を宿泊で利用させてもらい、2泊3日で職員や利用者の聞き取りをさせてもらった。ここは障がい者の就労継続支援B型の作業所で、クッキーの他にパンやワカメなどの水産品を扱い、月給に相当する工賃は5万円を維持している。全国平均が1万数千円だから、かなり高い。オリジナル品の製造や、土日も営業するレストランの経営などが効果を上げている。
 利用者さんに聞いても、いろいろな種類の作業があるのでマンネリにならず、またレストランでは直接お客の美味しいという反応に触れることができるから、仕事が楽しいという。
 ある職員は、「きらら女川で働いている障がい者さんは幸せですよ」とのこと。以前に勤めた別の業種の職場では、障がい者へ職員の暴力が日常的に行われ、そのときの障がい者の怯えた顔が今でも忘れることができないそうだ。
 震災後に拠点を鳥取県に移して頑張っている理事長がちょうど女川に来ていたので、8日の昼食に駅前で全員参加のバーベキューがあり、そこにも同席させてもらった。年配の理事長は、若い利用者に自分の皿から肉を分けてあげていた。
 まだまだ課題はあるが、ここでも復興が着実に
進みつつあることを実感できた。
 
 

2017-09-12

3カ月ぶりの陸前高田

 9月5日の朝4時過ぎに眠い目をこすりながら家を出て常磐線に乗り、上野駅から新幹線で一ノ関へ行き、乗り換えて気仙沼経由で陸前高田へ入った。自費の取材のため経費を安くするため、今回はJRの東北フリーパス券を使い、通常では片道で1万5000円ほどするが、往復で同じ額だからそれは助かる。もっとも使えるのは年に数回で、それも4日間だけだから限定的ではあるが。
 津波が襲った陸前高田の市街地は、今も7mほどのかさ上げ工事が進み、すでに完成した中央部には大きなショッピングセンターや児童公園が完成し、また夏に図書館もオープンしている。そこのバス停で下車し、持参した折り畳み自転車を組み立てて目的地の「あすなろホーム」をめざした。
 12時からの誕生日会に参加させてもらった。職員さんたちからのサイダーや菓子の差し入れがあり、昼食を兼ねてバースディパーティーの歌などもあった。
 顔なじみの利用者さんも何人かいて挨拶もした。その一人の30歳半ばのマー君は、今回も次作の詩をいくつか見せてくれた。その1つである。
 「手をとりあって
 仲間が一人でも 氷のようにかたい
 ながれる 氷もあるんだって
 ぼくでも よければ
 手を とりあって行こうよ
 作業場近くまで ながれるように
 手の平の チカラをあたえもらい
 ぼくは ただ仲良くしたいだけだし
 仲間が一人でも ながれすぎて
 つらそうな時 みてみぬふりって
 ぼくは もうしたくないんだ
 だから そう手をとりあって
 心のいやせる しゅんかんを
 ぼくは 仲間といっしょに
 いたいだけなのだ」
 ダウン症の障がいが少しあるマー君は、原稿用紙に書くにも時間がかかったことだろう。日頃の作業所での一コマを、ていねいに描いていてホッとする素敵な詩だ。
 取材ではこうした人に会うことができるので楽しい。

2017-09-03

四街道市民ミュージカル「ドンマイ」を観て

 9月2日の午後1時から千葉県四街道市文化センターにおいて、千葉盲学校のフロアバレーチームをテーマにしたミュージカルがあり、約800人ほどの方たちと鑑賞させてもらった。一般に馴染みの薄いフロアバレーチームとは、視覚障がいのある人と健常者が一緒にプレイできるスポーツで、床上30cmに張ったネットの下を、動かすと音の出るボールを潜らせて得点を競う。
 4歳から81歳までの総勢100人の市民が、フロアバレーチームの当事者や多彩な応援者などになって2時間の舞台はテンポ良く展開していった。
 いくつも印象的な場面はあった。その1つが、小学生ほどの子ども約10人たちによるチアガールの踊り。音楽に合わせてリズミカルに踊る中で、頭の大きさは他と同じだが、足の長さが著しく短い子がいて、他の子と一緒に楽しく全身で飛びはねていた。
 演技を終えた後で会場外のロビーにいると、偶然にもその子がすぐ近くにいて母親らしき若い女性と話していたが、すぐに友だちの方に駆けていった。
 「お母さんですか」と聞くと、「はい」とのことで少し立ち話をさせてもらった。3歳のとき足の骨の発達に障がいがでる病気にかかり、今は小学校2年生だが背丈が低いこと、今回の出演は親や先生からでなく自らがチラシを持ってきて、「ぜひやりたい」とのことで実現したことなどを話してくれた。
 「お子さんの素敵な踊りで、私も元気をもらいましたよ」と伝えると、「ありがとうございます」と深々と頭を下げられて恐縮した。素敵な親子に出会えて嬉しかった。