2013-03-28

映画「東京家族」

 やっとのことで昨日この映画を鑑賞することができた。期待した通りのいい映画である。小津安二郎監督による60年ほど前の映画「東京物語」をモチーフにし、2011年3月の震災直前にシナリオは完成していたが、それを山田洋次監督はストップさせ、震災を関連させて練り直した。周吉の次男の昌次と恋人の紀子が出会った場を被災地のボランティアとしたことや、昌吉がしたたかに酒を飲んで心の通じる場面の少なくなる東京での家族の在り方を通して、今の社会を「このままではいかん!」と独白することなどに、深刻な震災後の世相を反映させている。それにしても、東日本大震災を声高に「大変だ!」とか「がんばれ!」などと叫ぶのでなく、身近な家族の有り様を通して、一人ひとりの生き方をじんわりと考えさせてくれる。戦後すぐの「東京物語」では、次男の戦死や戦争未亡人を登場させ、第二次世界大戦が背景にあり、こうした社会性が物語に深味を付けている。これからも震災のルポルタージュを書くつもりの私にも、いろいろと考えるヒントをくれた映画であった。  1つ気になったのは「東京家族」というタイトルで、そもそも東京家族という名詞があるのか疑問で、どうも私にはわかりづらい。素直に「新東京物語」でいいのではないかと思うのだが、何か山田監督に意図があったことだろう。

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