2015-11-03

スイスを旅して

 10月18日から27日まで、いつもは30万円ほどして敬遠していたスイス・ツアーが、20万円を切る格安があり妻と出かけた。観光シーズンの終わりでもあり、どこまで楽しむことができるのか不安もあったが、添乗員も驚くほど天候に恵まれ、予定したマッターホルン、モンブラン、ユングフラウなどは全て見ることができ、また自由時間が半分ほどあり、20枚ほどのスケッチを楽しくすることもできた。以下はいくつか旅の印象である。
 第一に、4000mをこえるアルプスの山々にある氷河の変化である。スイスだけで122もある氷河は、地球温暖化で毎年7m減少し、それが最近は10mと早くなり、さらに昨年は13mも溶けて短くなった。その水を使い水力発電に活用しているのはいいが、IPCC(気候変動にに関する政府間ペネル)の予想では、このまま推移すると今世紀末までに気温が2.7℃上昇し、アルプスの氷河が消えてヨーロッパの水源がなくなるので、農業や漁業などに与える影響は計り知れない。さらに氷河が溶けて軽くなった影響で、山が少しずつ高くなりマッターホルンは3mアップしたそうで驚く。
 第二に、どんな小さな町でもCOOPの店があって嬉しかった。スイスの物価は高く、お握り1個が450円や、小さな弁当でも2000円ほどして驚いた。通常のビールやワインも日本とほぼ同じであるが、COOPのPB商品は、ビールで500mlが75円で、1lのワインが300円と安く、毎晩のように利用させてもらった。レシートには、Für mich und dich(私とあなたのために)と印字してあった。もっともおかげで夜の原稿書きは酔っぱらって十分にできず、予定した2本のうち短い1本を書きあげただけであった。
 第三に、スイス人の柔軟な考え方の一部を見ることができた。徴兵制を今もしており、軍服姿の若者の多いのは気になったが、いくつかある空軍基地は、訓練で使わないときは住民の遊び場に開放している。フランス、ドイツ、イタリアに隣接し、国境を自由に行き来できるが、EUには加盟せず通貨も独自のスイス・フランで、自分たちのことは自分たちで決めている。
 第四に、自分の暮らしを大切にした働き方である。昼休みがあって店も閉めるし、日曜日に開いている店も少ない。ある展望台へゴンドラで登ったとき、30歳の男性と一緒になり英語で会話すると、背負っている簡単なハングライダーで、山頂からふもとの町へ飛び降りるという。休日かと思ったら、ランチタイムだというし、さらに1回でなくうまくすれば3回は挑戦するというから驚いた。危険ではないかと聞くと、全然平気で奥さんも一緒に飛んでいるとのこと。日本では考えられないことである。
ユングフラウの氷河にて