2015-12-12

2015年ネパールの旅③

 文化のある場所には、必ず音楽が流れ独自の楽器を奏でている。長い歴史のあるネパールには、写真のようなサーランギーがあり、その語は、100を意味するサーと、色を意味するラングという2つのヒンディー語の合成語で、100以上の音色を出せることを意味し、ヴァイオリンの原型との説もある。
 ネパールにいる友人の師匠が、このサーランギーの有名な演奏者で、自宅にある工房を訪ねて話を聞かせてもらい、特別に6500ルピー(約7500円)で写真の1本を購入させてもらった。1本の堅い木を成形してくり抜き、胴の部分には山羊の皮を貼って音響を増すようにしている。ヴァイオリンは指で弦を抑えるが、サーランギーでは爪で絃の下から当てて音を調整する。手にするとずっしりと重く、座って両膝の上に立てて、弓を当てて演奏する。ヴァイオリンほど上品な音ではないが、いかにも樹木の音といった素朴な音色でおもしろい。インドでは、4本の弦と胴体の間に何本もの絃を張ったものもあり、師匠もそうした楽器を作っていて演奏してくれた。音色により深みがあって面白かった。もちろん音階もきちんと奏でることができるので、ぜひ練習して簡単な曲を演奏してみたいものだ。
 ところでこの素晴らしい楽器を作り、かつ演奏する人たちが、ネパールではカーストの最下層であるダリットに位置付けられ、今でも社会的差別を受けている。師匠はカトマンズ大学音楽部の教授であるが、名前でダリットとすぐ分かるため、建物の出入りなどで制約を受けることがある。ダリットの出身者が教授になるなどは特例で、掃除や肉職人など、給与の安い特別な仕事しかつくことができず、それも仕事があればいいほうである。
 
 今回の地震で、社会的弱者であるダリットへの援助が少なく困っているとのことで、独自の子ども支援ができないかとの相談があり、教授の案内でダリットの2家族を訪問させてもらった。大学の近くで夫婦が清掃員をしている家庭は、2人で月16000ルピー(1万8600円)の収入がある。月2000ルピーのアパートを訪ねると、狭い部屋はそれなりにきれいだが、太陽は当たらず、日中は外に出て日向ぼっこをしている。8畳ほどの部屋にダブルベッドが1つで、親子4人が暮らし、飲み水は外にあるタンクから買っている。
 もう一つの家族は、教授の崩れた実家に仮設小屋を造って暮らしている親族で、夫は中近東へ出稼ぎに行き、月2万ルピーを稼ぎ、その中から1万5000ルピーを仕送りしている。
 どちらの家庭でも、1年間の子どもの勉学費は約5000ルピー(5800円)であった。教授と相談し、ダリットの子どもの勉学を支援する委員会を設立し、私の拠出する50万円で貯金して利子を得て、それを活用することにした。NPOの貯金では年率7.75%にもなるので、15%の税金を差し引いても、1年で利子は2万7000ルピーほどになり、5人の子どもの年間勉学費にすることができる。利子の発生は1年先なので、その間の運用について友人が2万ルピー出してくれることになり、来春から運用することにした。今後が楽しみである。

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