2015-12-23

「愛とヒューマンのコンサート」で福島・宮城の被災地を訪ね

 19日から21日にかけ、福島県川俣町にある全村避難の飯舘村の仮設住宅や、同保育園と中学校、それに宮城県名取市の仮設住宅など計8か所で「愛とヒューマンのコンサート」があり、それに同行した。今回は、金沢恵理子さんのピアノとソプラノの声楽家である大前恵子さんが熱演した。「アベ・マリア」ではじまるが、場所によってシューベルト、グノー、カッチーニの作品を使い分けてインパクトを与え、クリスマスの曲や日本の歌などもまぜて、楽しい1時間がすぐに過ぎていった。
 もうすぐ震災から5回目の正月を迎える仮設住宅では、復興住宅や自力で家を建てて出る人が続き、どこも使っている部屋は半数ほどになっている。それも残っているのは経済力の乏しい高齢者が大半で、これからの行き先を心配している人が多い。他方で復興住宅は、家賃がかかるし、集落に関係なく集まるのでまた新たにコミュニティを作らなければならず、高齢者の引きこもり対応など新しい課題も出ている。飯舘村では2017年春の帰村を村長が打ち出しているが、村の75%をしめる森林の除染はできず、道路や敷地を除染してもすぐに山から放射性物質が流れ落ち、子どもを持つ親の不安が広がっている。
 参加者と交流する場が2回あり、私も以下のような話をさせてもらった。
 「人の頭には左右2つの脳があり、普段私たちが新聞を読んだり会話などで使っている論理対応の左脳と、音楽や美術などに触れて感性を高める右脳があり、現代人は左脳が発達していますが、音楽を聴き右脳の働きが活発になって左右のバランスがとれると、気分も良くなります。さらに人の耳で聴くことのできる音の周波数は20ヘルツから20kヘルツですが、その前後にもたくさんの周波数の音があり、鼓膜では感じませんが、人体を構成している40兆個の細胞は共振します。本来細胞には、30億年とも言われている生物の誕生からつながって、元気に生きる力を内在していますが、今回の震災などの過剰なストレスで被災者の皆様の細胞は萎縮しています。生の音楽による共振で、前向きに生きようとする力が内部からわいてきますので、ぜひこれからも生の演奏を楽しんでください。
 さらには、音楽はこうしたプロから聴くものだけではありません。人間の体は最高の楽器で、日頃の暮らしの中で、たとえば子どもや孫に童謡を歌ってあげることも、子どもや孫の内部にある生きる力を刺激することができます。生活の中でぜひもっと自由に音を楽しんでください」
 もちろん政治の問題は大きく存在し、政府や東電の責任は厳しく追及しなくてはならないが、不条理で矛盾の中でも、一人ひとりの内部にある力をより引き出すことも、同時にする必要があると私は思う。 

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