2017-03-19

陸前高田訪問記3

 もう一つの福祉作業所の青松(せいしょう)館も訪ねた。ここもいくらか高台にあるが、いくらか低く津波が押し寄せて被害があった。1955年に法人化した太陽会という長い歴史のある社会福祉法人の運営する1つである。
 対応してくれた米田館長に名刺を渡すと、「取手(とりで)からですか」と正確に読んでくれた。普通は取手を「とって」と読むので驚くと、何と取手市で働いたことがあるとのことで二度びっくりした。
 そのこともあり親しく話を聞かせてもらった。その1つが震災をきっかけに、何と新たな事業を立ち上げている。それも震災で消えそうになった伝統の椿油で、後日その新しい作業所を自転車で1時間ほどかけて訪ねた。作業所の名前は、青松館せせらぎである。椿油を私は知っていたが、それは女性が髪に付ける程度であった。ところがここでは、食用をはじめとして大工道具や家具の手入れなど多様な使い方をしていた。そのため専用の製油所が震災前は陸前高田に1軒だけあったが、そこも震災で壊滅し、さらに跡継ぎの長男も犠牲になり、石川夫婦は再開をあきらめていた。そこに太陽会からの相談があり、夫妻はやがて喜んで協力することになる。
 元JAの建物での作業所では、まず2人の障がい者が椿の実を選別し、それを焙煎→圧搾→濾過して製品化していた。作業所の清水さんも側にいるが、機械とはいえ微妙な職人技の操作が必要で、全ての作業は石川夫妻がコツコツとこなしていた。
 純度100%の透明な黄金色の「北限の特産品 気仙椿油」には、上品でほのかな香りの中に、地域に根差した長い伝統文化と、震災後の今を生きる人々の優しさを感じることができた。
青松館せせらぎ搾油工房の前で石川ご夫妻と清水さん。横は唯一発見された奇跡の看板。

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