2017-04-24

農福連携の場を訪ね

 4月22日に所属する日本科学者会議食糧問題研究委員会の研究会として、埼玉県熊谷市における農業と障がい者福祉の連携の場を訪ねた。
 1つ目は1987年にスタートした地域福祉活動グループ「おにの家」で、田舎のカフェおにっこハウスと2つのグループホームを運営している。訪問したおにっこハウスの傍に加工場を建て、契約農家で生産した大豆や米などを使い、独自の味噌を作って販売している。野菜や食品などの販売コーナーも兼ねたカフェは、三角の高い屋根の建物で解放感があり、落ち着いて食事や会話を楽しむことができる。「ハンディのある人もない人も共に働くお店」をキャッチフレーズにした店で、誰もが楽しそうに働いていた。ここでの障がい者が受け取る1カ月の工賃は4万3000円とのことで、全国平均の約3倍と高い。さらにグループホームの経費が月5万円と安く、障がい者年金と工賃で自活でき配慮がいきとどいていて感心した。飼っている1800羽の鶏は、過剰なストレスを与えない平飼い、安全な自家飼料、野菜などの緑餌で育て、毎日1000個の卵はけっして安くないがいつも完売している。
 850円のランチは、手作りの料理と古代米の御飯で美味しくいただいた。
 2つ目の施設は、同じ市内で利根川近くにある埼玉福興(株)。20人の障がい者が2kmほど離れた寮で共同生活をして徒歩で通い、玉ねぎなどの畑仕事の他に、ビニールハウス内で各種野菜の高床式水耕栽培をしている。ここの工賃は、全国平均に近い1万円ほどであった。
 農業人口が減少する中でこうした農福連携は、単純作業であれば可能な障がい者の力を発揮してもらう場として、近年各地で広がりつつある。我が国では全人口にしめる障がい者は6%をこえているのに、会社などでの法定就業率は2%で、それすら守っていないところもある。障がい者が人間らしく働く場として、これからも農業は大切である。
 と同時に現場では、時として効率追求の農業と障がい者を大切にする福祉の考えが対立することがあり、バランスをどうとるか課題になっているとの声もあった。
 ともあれ若い農業人口が激減している日本では、これからますます高齢者と障がい者の関わりが大切になっていくだろう。

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