2018-05-10

南相馬を訪ね3 いくつもの巨木が

 今回は時間的なゆとりがあり、取材の合間に持参した自転車で地域を走り回った。鹿島では以前に訪ねた一本松のあたりに行ったが、新しい防潮堤ができ大きな風力発電が4基も回転していて、まるで風景が変わっていた。残念ながら枯れた一本松は伐採し、その一部は南相馬博物館に展示してあって見させてもらい、残りは地元の人たちの表札などにしたそうだ。
 歴史の古い地域であり、巨木がいくつもある。1つが鹿島御子神社の大けやきで、樹齢が何と800年の巨木が2本もあった。800年前とは1200年前後の鎌倉時代であり、親鸞や日蓮などが活躍し、鎌倉の大仏ができた頃でもある。持っていったスケッチブックに、巨木の前と後ろから2枚描かせてもらった。大地にドッシリと根差し、それは圧巻であった。両手を樹木に当て、しばし目を閉じてエネルギーを分けさせてもらった。ふと足元を見ると樹皮の小さなかけらが落ちていたので、記念にいただいてきた。
 2つ目は小高地区にある同慶寺の大イチョウである。江戸時代にこの地域を治めていた相馬家の菩提寺で、16代から27代までの一族が大きな石塔の下に葬られている。あいにくの小雨が降り寒くてかじかむ手で、本堂の軒先に座って静かにスケッチさせてもらった。なおここの住職とは、以前に会って名刺を交換していたので、30分ほどであったが会って人の生き方などの話を聞かせてもらった。
 ところでこうした巨木は、いったいどのようにその時代の動きを見ていたのだろう。そして今回の原発事故という人災を、どのように感じて眺めているのだろうか。きっと愚か者めと、高い上から見下しているのではないだろうか。住んでいる取手市も放射能に汚染されており、その点では私も被害者の一人だが、巨木にとっては人類という加害者の一人にもなってしまう。

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