2018-07-15

岩手で被災した漁民の苦悩

 大船渡から越喜来(おきらい)をまわり、何人かの漁民にあって話を聞かせてもらった。3年ぶりの大船渡は、大きな魚市場やホテルなどが完成し、すっかり街並みがかわっていた。復興が順調かと思ったが、実状はそうでもなかった。
 一つが貝毒の発生である。原因が不明で昨年も今年も発生した地域があり、主要なホタテの養殖による収入が皆無で困っていた。共済に加入していて保障はそれなりにあるが、それも3年間だけなので、来年も被害があるとそれ以降は打ち切られてしまう。毒の発生に地球温暖化による海水の温度上昇もあるようだが、同時に地元で聞いたのは防潮堤などのコンクリートの影響である。強アルカリ性のコンクリートが多くの海岸線に使われており、沿岸の汚染につながっているのではとのこと。同時に岩手県では集落の前に高さ12.5mの防潮堤を築き、この重みでもって山から流れてきた地下水をおさえ、沿岸の湧水が少なくなってプランクトンの増殖に影響しているとの指摘である。
 二つ目は、小規模な漁民無視の行政で、その一例が岩手サケ裁判である。隣の宮城や青森では小規模な漁民でもサケを獲ることはできるが、岩手では資源管理ができるとして大手の水産会社と漁協だけに限定されている。100人の漁民が「浜一揆」として訴えて、今も裁判を続けている。さらにはマグロについては、全国規模で大手水産会社の利益優先の政策が進行し、このまま推移すれば漁業をあきらめる人が続出するのではとの声がいくつもあった。農業だけでなく漁業でも、企業優先の動きが強まっている。生産者だけでなく、消費者も含めた国民的な課題である。

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