2018-10-25

鹿児島の魅力

 3日間と短い時間であったが鹿児島の各地をまわり、あらためていくつかの魅力を見付けた。
 第一は、元気な有機農業である。2017年の全国の有機認定事業者は県別でみるとトップが北海道の271戸で、二位が鹿児島の259戸で、勢いは鹿児島が上で近く一位になるそうだ。研修制度を整え若い就農者を支援しているので、いずれそうなるだろう。鹿児島は、桜島からの火山灰が今も降り、土地もそんなに肥えていないので農業の環境としては厳しいだろうが、いろいろな工夫と協力で有機農業という新しい可能性を追求しているから素晴らしい。
 第二は、美味しい本格焼酎である。地元の焼酎を1日目もかなり飲んだが、2日の夕食時に有機農家も連携する「地球畑カフェ・草原をわたる船」では、PBの有機栽培米全量使用本格米焼酎「地球畑」が最高だった。同席した生産者に聞くと、お湯6に対し焼酎4で、まずお湯から入れると一番美味しいとのこと。料理の野菜は全てパリパリの有機だし、近海の魚は全部天然物。いくらでも食べて飲むことができ、団欒もはずみ何杯も空にした。飲み放題だったので、最後に少し残った4合ビンをもらって帰った。
 第三は、自然の雄大さである。坂本龍馬が新婚旅行に訪ねた高千穂峰や、知覧から特攻機が飛び立つときに目指した開聞岳など、歴史を重ねるとさらに興味深くながめることができる。鹿児島空港で出発まで少し時間があり、ロビーで地球畑の焼酎を飲んだ。気持ちが良くなり、ふとロビーの壁を見ると大きな屋久杉のパネルがあり、横に輪切りが飾ってある。その年輪は2600年なので、日本の歴史が始まる前である。鼻を近づけると我が家の書斎においてある縄文杉の文机と同じ香りがした。横のビデオでは屋久島の映像を流し、杉や焼酎なども詳しく紹介していた。心地良い酔いもあり、ぜひ訪ねてスケッチしたいと思った。

障がい者の働く作業所と生協コープかごしまの連携

 鹿児島での3日目である21日は、生協の谷山店を訪ねて、作業所を運営している麦の目福祉会とコープかごしまとの30年にもわたる連係がメインの視察であった。
 「ゆりかごからお葬式・お墓までの安心」をうたう麦の目福祉会では、11ものグループホームの他に10の事業所や子ども支援センター2、保育園2などがあり、200人近い障がい者が暮らしたり働いたりして利用しているそうだ。さらに医療関連にまで事業領域を広げ、今年の8月に福祉生協を設立し、診療所を開設したというので驚く。医療なので医療福祉生協連に加盟するのかと聞けば、そうでなく労働者生産協同組合連合会(ワーカーズ・コープ)とのこと。ここが少し気になった。
 コープかごしまからは、産直事業や麦の目との関連について詳しい説明があった。特に印象的だったのは、中山専務スタッフによる話で、目的と手段の区別が大切で、ややもすると店や共同購入の手段に職員や幹部も目はいくが、そもそも生協の目的をあいまいにしたらダメで注意しているとのこと。
 経営の規模拡大や収益の向上も大切ではあるが、それらはあくまで手段の1つであり、目的である地域や組合員の豊かな暮らしづくりがメインである。
 2021年にはコープかごしまが設立50周年になるとのこと。地域にさらに根差し、麦の目福祉会との連携がさらに発展することだろう。
 写真は麦の目と生協との連携事業である移動販売車。イラストも全て利用者さんの作品。

農福連携の白鳩会「花の木農場」を訪ねて

 鹿児島での視察の2日目である20日の午前中は、大隅町にある花の木農場を訪ねた。ここでは茶・養豚・稲作・ニンニク・露地野菜・水耕栽培・食品加工を障がい者もしており、驚くのはその規模である。全体で45haもあり、最大の花の木農場の耕作面積だけで27.6haもあり、高台から見ても全体像をつかむことができない。
 そこで働いている障がい者も多く、農業と製茶の花の木ファームで90人、農業・ハムとソーセージ製造・惣菜・パンのセルプ花の木で40人、豆乳・豆腐などの製造の花の木大豆工房は20人、ジェラード製造の花の木菓堂は20人、調理・カフェ・石鹸作りなどの花の木カノンは20人と全体で定員190人が、職員と一緒にそれぞれできる作業で関わっているから凄い。
 1972年に設立したときはまだ小さく、「来る人を拒まず」の考えで、どんな障がい者でも何か働くことができれば、それに合った仕事を探して少しずつ規模を増やしてきた。作物も変化させて試行錯誤し、主力のお茶も途中からで、それまではミカンなどを栽培したこともあるがこの土地に合わなかったそうだ。
 障がい者の人たちが暮らすグループホームやレストランなども、個性豊かな建物として農場に点在して絵になる風景であった。数千人が利用できるイベント会場まであり、お祭りなどを含めて地域の人たちとの接点を作っている。
 農業と福祉が繋がり、それも生産からレストランと六次化が進んでいる。ぜひこれからも発展してほしいものだ。
 

2018-10-22

鹿児島県の有機農業を訪問

 19日から21日まで「食糧の生産と消費を結ぶ研究会」(生消研)の40回夏の現地学習交流集会があり、久しぶりに参加した。開催テーマは、「協同の力で持続的社会を構築する~地域再生と協同組合2.0」である。参加費4万4000円に九州を往復する飛行機代がかかるので、年金生活者に決して安くはないが、障がい者が農業に関わる農福連携や、地元のコープかごしまとの連携も視察に入っていたので興味を持った。内容の濃い楽しい3日間であった。
スケジュールは下記。
10月20日(土)    JAそお鹿児島ピーマン部会 国民宿舎ボルベリアダグリ泊
10月21日(日) 午前  鹿児島県肝属郡南大隅町の白鳩会         午後  かごしま有機生産組合
       かごしま有機が直営するレストランカフエ草原をわたる船 交流会
       鹿児島サンロイヤルホテル泊

10月22日(月) コープかごしま谷山店

      「生協と社会福祉法人との連携で展開する誰もが生きていける社会づくり」

初日はIターン就農者育成と産地の将来の発展に賭ける取り組みについて、ピーマンの生産を通して説明を聞き、その後で作業の現場を見せてもらった。大阪で建築関係の仕事をしていた30代の男性は、奥さんと一緒に昨年から移住して働いていた。近くに産婦人科の病院がなくて不便だが、農業に切り換える願いが実現して喜んでいた。ここでは農業公社とJAが連携し、異業種からの農業就農者へ丁寧な研修制度をしている。
写真はピーマンを育てているビニールハウスの内部で、中央の白い花は、ピーマンにつく害虫の天敵が寄ってくる植物である。こうした研究もすすめ、より安全なピーマン作りをしているので感心した。

2日目の「かごしま有機生産組合」の話でもそうで、一人前になって独立するためには、やる気だけでなく必要な知識と技術を修得しないと前に進まない。
都会の高いストレスから離れ、農業をしつつ自然の多い地方で暮らしたい人はこれからも続くだろう。そうしたときに研修制度は大きな役割を発揮する。




2018-10-07

原発事故による放射能被害に立ち向かう

 6日の夕方から、都内で「わたしは あの日ひばくした」の集いがあり参加した。主催は「ふくしまと全国の集い」であり、各自の初期被曝と累積被爆を明らかにし、事故の加害者責任を問い、政府と原子力マフィアによる国民総被爆推進政策を止め、原発の全廃をするため昨年から大同団結を呼び掛けてきた。
 集いでは、①「被曝被害。こうやれば誰でも割り出せる」:科学者の山田國彦さん、②「被曝被害の立証で加害者の特定と告発へ」:飯舘村議の佐藤八郎さん、③「日本国際放射線委員会の設立めざして」:広野町議の阿部憲一さん、④「子ども住民を急増する健康被害から守るために」:小山潔さんから貴重な話がそれぞれあった。
 山田さんからは、いつものように詳細なデータに基づき、初期被曝を各自が具体的に算出して、その結果で一人ひとりが考えることの大切さを強調していた。飯舘村の村役場の樹木で、雨に直接当たっているものと当たっていないものの変化を写真で示し、放射能の影響を可視化していた。
 飯舘村の細川牧場からは一人娘の美和さんが来ていた。牧場でここしばらく馬の死ぬことはなかったが、9/28に41頭目が犠牲になったとのこと。後で彼女に聞くと、心労で倒れた母親は、入院したままだがだいぶ元気になってきたととことで少しホッとした。
 9時過ぎに集いを終え、東京駅方向に帰る5人で1時間ほどビールを飲みつつ交流した。放射能検診を実現するため100万人署名を進めている大阪の人、東日本大震災について映像で追いかけている千葉の人、子どもを被ばくから守るための脱被ばく実現ネットの埼玉の女性、生徒に真実を伝えたいとがんばっている保健の都内高校の女性
教諭など、それぞれの熱い胸を聞かせてもらい勉強になった。いろいろな方が、各方面で工夫しつつチャレンジしている。できるところから手をつなぎたい。